受託製造組織(Contract Manufacturing Organization, CMO)は、製薬企業やバイオテクノロジー企業に対して医薬品の製造サービスを提供する専門企業であり、医薬品産業の重要な基盤として機能しています。世界的な医薬品需要の増大や高度な製造技術の必要性が高まる中で、企業は製造プロセスを外部に委託するケースが増え、CMO 市場は急速に拡大しています。
世界の CMO 市場規模は、2025 年に約 1,682 億米ドルと評価されており、2032 年には約 2,897 億米ドルに到達する見込みです。これは 2025 年から 2032 年の間で年平均成長率(CAGR)が約 8.1%で推移すると予測されています。
この成長は、バイオ医薬品、遺伝子治療、個別化医療など、高度で複雑な製造ニーズが増加していること、さらにはジェネリック医薬品需要の拡大によって支えられています。製薬企業はコスト削減、リードタイム短縮、品質向上のために、CMO を戦略的パートナーとして活用しています。
日本市場においても、CMO 活用の動きは加速しています。製薬企業が研究開発に注力するため、製造業務を外部に委託して効率化を図るケースが増えています。以下が日本市場の主な特徴です:
高い品質基準への対応が必須
日本企業は国際的な品質基準を重視し、GMP など厳格な基準を満たす CMO が強く求められています。
グローバル供給体制を重視
国内だけでなく世界市場向けの製品供給が増える中で、国際ネットワークを持つ CMO の重要性が高まっています。
先端技術の活用が不可欠
バイオ医薬品製造、高活性医薬品製造など、高度な技術に対応できる CMO との協力が求められています。
このような動向から、日本企業は製造プロセスを戦略的にアウトソーシングし、競争力強化に取り組んでいます。CMO の高度な技術力と柔軟な生産体制は、今後の製薬ビジネスに不可欠な要素となっています。
CMO市場では、原薬(API)製造、製剤製造、包装、品質管理など各工程においてアウトソーシングが広がっています。新型コロナウイルス感染症流行期においてはワクチン製造の急増に対応するため、CMO の需要が一時的に大幅に伸びたことも市場成長の一因となりました。
今後は、デジタル製造、AIによる生産最適化、自動化設備の導入が進み、CMOの競争力はさらに強化される見込みです。また、日本企業がグローバル展開を進めることで、世界市場における日本のプレゼンスが高まる可能性もあります。